西尾維新
□化物語
あらすじ
主人公の阿良々木君が女の子たちと漫才しつつ怪異も解決したりする。
章ごとに解決すべき怪異と呼ばれる事件がありますが、それらはほぼオマケのようなものです。
主人公と様々な属性を持った女の子達との漫才じみた会話を楽しむことが目的だと思います。
戯れ言シリーズでもおなじみの、言葉遊び中心のボケとツッコミが読んでいて疲れるほど繰り
返されます。女の子達の総ボケに対して、主人公が全力でツッコミまくる。
西尾維新自身も楽しんで書いたと後書きでいっていたとおり、こういう属性を持った女の子が
いたらどんな漫才ができるかということをいろいろ実験しているような内容でした。
女の子達の属性はメガネッ娘、ロリ、黒髪、スポーツ少女、委員長、etc……、が組み合わさっ
ています。
ただメインヒロインの属性は作中でツンデレとなっていますが、素直クールが近いように思い
ます。ツンデレはむしろ主人公。
あまりのボケ倒しツッコミまくりの展開に、私は連続して10ページ以上読むと疲労がたまり
ました。それでも一度最後まで読んでしまえば、どこから読んでも気分転換に笑える作品です。
2008/04/12
□ DEATH NOTE ANOTHER NOTE ロサンゼルスBB連続殺人事件 西尾維新
中途半端な印象のノベライズ
デスノートの世界観と登場人物の名前だけを利用した別物の作品と感じました。
登場するのが南空ナオミとLなので、この2人がとうこうなるという緊張感がありません。
デスノート第1部の緊張感がものすごく好きだったので、このダラダラ感はデスノート第2部のよ
うで退屈です。キャラクターもデスノートでのイメージを壊すような真似は出来ないため、西尾
維新の持ち味を生かし切れていないようでした。
この作品はメロがLから聞いた話を記録した内容という位置づけですが、それでいて途中から
ナオミの視点に変わるのは違和感を感じます。(Lかメロの想像ということなのか?
ただ、世界の広がりを感じさせるのはうまいと思いました。概要だけふれられている事件の方が、
ロサンゼルスBB連続殺人事件よりもおもしろそうに思え、そっちの話を読んでみたくなります。
事件現場で手がかりを探すシーンもいろいろ知恵を絞って解決していく様子がとても面白かった
です。犯人との知恵比べ、というのが好きなのでよかったです。ただ謎を一つ解決しても爽快な
感じを受けなかったのは竜崎がすべて知っていて誘導しているという書き方のせいだと思います。
それでも映画のセブンやSAWっぽい雰囲気を楽しむことはできました。
ネタバレここから
最後にLが竜崎と名乗るのが理解できませんでした。姿が似て
いて同じ名前を名乗る相手にナオミは疑問を抱かなかったのでしょうか? 他の名前を名乗れば
いいのになぜ竜崎と名乗ったのか。Lが初めて竜崎と名乗ったという伏線を回収するために無理
矢理そうしたとしか思えません。まあ、全体的に無理を感じる内容でしたがこれが特に気になり
ました。
ここまで
西尾維新にはオリジナルの作品でがんばって欲しいです。
□ トリプルプレイ助悪郎 講談社ノベルス
あらすじ
裏腹亭。作家、髑髏畑百足が生活していた建物に、娘である髑髏畑一葉がやってきた。
送りつけられた予告状、そして『三重殺の案山子』刑部山茶花の目的とは?
西尾維新が清涼院流水の生み出したJDCワールドに挑む。
JDCトリビュート第2弾です。トリビュートってどんな意味だったかな? というわけで調べてみると、
トリビュート小説 【トリビュートしょうせつ】
ある特定の作家に対し,尊敬や賞賛の意をこめて書かれた小説。その作家の作品を基にして,独
自の視点や解釈から新たに作品化したものなど。 (三省堂提供「デイリー 新語辞典」より)
ついでに
tribute
an act, a statement or a gift that is intended to show your respect or admiration, especially
for a dead person (Oxford Advanced Learner's Dictionary)
意味が正確に分かりさらに強く思うことは、この作品「トリプルプレイ助悪郎」は上記の意味を忠実に
体現した作品だった、ということです。
コズミックしか読んでいない私がいうのもなんですが、所々にかいま見られる西尾維新らしさがなけれ
ば、清涼院流水が書いた作品といわれても信じてしまうかもしれません。
雰囲気はあくまで本格らしさを漂わせているうえに、読者への挑戦状付き。これまでの西尾維新のミス
テリで一番本格的熱さのある展開です。
半分程度しか真相に迫ることができませんでした。
最後のぶっ飛び具合は清涼院流水に及びませんが、期待通り「そりゃねーよ」感もあり綺麗にまとまっ
ていました。
伏線命。これを書くのは相当楽しかったのではないかと思います。
こういうJDCシリーズがもっと読たい、そう思わせてくれる作品でした。
あと、清涼院流水は存命しております。念のため。
2007/8/18